勝田 亜純
ゲスト
勝田 亜純 / Katsuta Azumi
エプロンブランド GIVERNY 代表
国立大学卒業後、渡英。2年間の留学の後、日系商社のロンドン支社に勤務。帰国後、海 外アパレルブランド日本法人を経て、父の生地企画会社にて営業職を経験。子育て中に自分の残念なエプロン姿に悲しくなり、専業主婦でもワーママでももっと家でステキにいられるよう応援したいと思い2011年に自身のエプロンブランド「GIVERNY」 をオンラインショップでスタートする。2児の母。​​
村田 あやこ
記事を書いた人
村田 あやこ / Murata Ayako
ライター
お散歩や路上園芸などのテーマを中心に、インタビュー記事やコラムを執筆。著書に『た のしい路上園芸観察』(グラフィック社)、『はみだす緑 黄昏の路上園芸』(雷鳥社)。「散歩の達人」等で連載中。お散歩ユニットSABOTENSとしても活動。
細野 由季恵
撮影・編集した人
細野 由季恵 / Hosono Yukie
WEB編集者、ディレクター
札幌出身、東京在住。フリーランスのWEBエディター/ディレクター。エントリエでは 副編集長としてWEBマガジンをお手伝い中。好きなものは鴨せいろ。「おいどん」という猫を飼っている。

第60回目のゲストは、エプロンブランド「GIVERNY(ジヴェルニー)」代表の勝田 亜純(かつた・あずみ)さん。2011年にエプロンブランド「GIVERNY」を立ち上げた勝田さん。シンプルながらディテールや素材にこだわり、かつ機能性も重視した、家事の時間が楽しくなるエプロンをつくっていらっしゃいます。ブランド立上げからこれまでのヒストリーを伺いました。

いつも身近にあった
ものづくり

──エプロンに特化したブランドは珍しいと思うのですが、ブランド立上げのきっかけを教えていただけますか?

勝田さん:出産を機に仕事を辞めて、しばらく専業主婦をしていました。結婚するまでエプロンは全然持っていなかったんですが、専業主婦として家事をしていると、料理教室やなにかのお手伝いのときなど、エプロンが必要なことがたびたびあったんです。でも、いざエプロンを買おうと探しても、なかなか気に入ったものが見つからなくて。私以外にもエプロンを探していらっしゃる方がいるんじゃないかと思い、家事が楽しくなるようなおしゃれなエプロンをつくることにしました。

ネットショップであれば子育てと並行してできるのではと思い、子どもが幼稚園に上がるタイミングでブランド立ち上げに至りました。

──結婚前は、アパレルブランドやお父さまの生地企画会社にお勤めだったと伺いました。もともと、布や洋服には親しみがあったんでしょうか?

勝田さん:そうですね。アパレルブランドに勤めた後、父が経営する生地企画会社で2年ほど営業職をやっていました。父は岡山・倉敷の児島で、デニムの生地を企画していました。児島は、ジーンズの染色から加工、縫製まであらゆるジャンルの職人さんが揃った、ジーンズの聖地とも言われている場所です。「何十年代のリーバイスの見た目で」「こういう青味や黄味がいい」など、生地の企画はディープすぎる世界でしたね(笑)。

──身近な環境で、日々ものづくりに触れてこられたんですね。小さい頃から、なにかをつくっていらっしゃったんですか?

勝田さん:洋服など身につけるものへの関心が高かったので、裁縫も好きでしたね。生地はたくさん家にありましたし、祖母や母もしょっちゅうなにかをつくっていました。厚手の生地を縫えるミシンもあったので、父は車のシートカバーまで自作していました。私自身も、パジャマや洋服、手袋などを見様見真似でつくっていました。なにかをつくるのは日常でしたね。

──欲しいものがあったとき、単に買うのではなく「つくる」という選択肢が自然とあるのは素敵なことですね。エプロンも、「お気に入りのものがないからつくろう」と行き着いたのは自然な流れだったんでしょうか。

勝田さん:実家の生地企画会社でもちょうど製品化をはじめた頃でしたし、周りに縫製会社や付属をつくる会社はたくさんありました。やったことはないものの、「できそうだな」と思える環境だったことは大きいかもしれませんね。

当時は、まさか自分が実際にブランドを立ち上げるとは思っていませんでしたが。

洋服のように選べるエプロン

──ブランドを立ち上げようと思ってから実際に商品化するまでは、どのように進めていかれたんでしょうか?

勝田さん:洋服にはおしゃれなブランドがたくさんありますが、エプロンにはそういったブランドがあまりなかったので、洋服みたいに選べて、身につけると気分が上がるエプロンをつくりたいと思っていました。

最初は雑誌などを見て洋服のデザインを参考にしながら、ディテールに洋服らしさを取り入れたデザインを企画しました。生地はパターン帳を参考にして決めて、パターンやサンプルづくりは外注して製品化していきました。

──軌道に乗るまでに大変だったことはありますか?

勝田さん:つくったはいいものの、どうやって売っていくかで苦戦しました。ネットショップに載せても、勝手に売れていくわけではありません。

ブログを一生懸命書いたり、百貨店のエプロン売り場に飛び込み営業をかけたり、展示会に出展したり。

コツコツ活動していくうちに、百貨店のバイヤーさんからお声がけをいただいて、少しずつ百貨店でポップアップショップを開催できるようになっていきました。

──ご縁を広げていかれたんですね。

勝田さん:多分、「エプロン」に特化しているブランドが他にあまりなかったことも大きかったのではと思います。アクセサリーやアパレルだと、なかなか同じようにはいかなかったかもしれません。

──最初に買ってくださった方のことを覚えていますか?

勝田さん:一番最初は、同じマンションのママ友が買ってくださいました。二ヶ月後くらいにネットショップ経由で、お料理教室の先生が買ってくださいました。「いつもエプロンを探していて、検索してたどり着きました」とおっしゃっていました。

お料理教室の先生は、ご自身のイメージに合ったエプロンをいつも探していらっしゃるようで、「探してもなかなかいいものが見つからなかったので、こんなに凝ったデザインのエプロンに出会えて嬉しいです」といったコメントをいただいたこともあり、嬉しかったですね。

好きな色を組み合わせてつくる、オリジナルのエプロン

──色味や生地も素敵ですね。デザインでこだわった点を伺えますか。

勝田さん:エプロンというと、白や黒、原色、花柄などが多かったので、ニュアンスカラーを取り入れました。生地に関しては、当初は綿素材がメインでしたが、お客さまから「シワにならないエプロンがほしい」というお声を多数いただいたので、加工所さんにお願いして防シワ加工や樹脂加工をほどこしたり合成繊維を試したりと試行錯誤した結果、いまはリネン素材のエプロンをメインにつくっています。

厚みや織りの具合でゴワゴワせず、重くなりすぎず、かつアイロンがなるべくいらないリネン生地を選んでいます。またスタイリッシュさを出すために、紐はリボンを使っています。洗濯してもシワにならないので、お客さまからは喜んでいただいていますね。

32色の生地と16色の紐の中からお好きな色を選んでいただけるエプロンもご用意しています。

──自分で色を選べるのは楽しそうですね!

勝田さん:じつは10周年の際にプレゼント企画として実施した際、たくさんの方が応募してくださったんです。いまは月に一度、コンスタントに受け付けています。ちょうどコロナ禍でおうち時間を楽しもうというムードがあったので、自分の好きな色の生地と紐を選んでオリジナルのエプロンをつくるのを喜んでいただけたのかな、と思います。

お料理教室の先生だと、ご自身のテーマカラーやパーソナルカラーで選ばれる方もいらっしゃいますね。

──たとえば夫婦で違うデザインにして、一緒にキッチンに立つのも楽しそうです。

勝田さん:当初は女性のお客さまがメインだったので、エプロンの紐にもラメの入ったリボンを使っているんですが、最近は旦那さま用にオーダーされたり、ご夫婦で兼用される方もいらっしゃいます。私が思っている以上に、世の中は進んでいるのかもしれません。

完成品を最初に手に取る瞬間が楽しい

──生地やデザインについて、お客さまの実際の声を柔軟に取り入れていらっしゃるのが印象的です。お仕事をする上で大切にしていることはありますか?

勝田さん:独りよがりになりがちなので、ポップアップで店頭に立つときはお客さまの声を聞くようにしています。またネットショップだとなかなか手に取れないので、不安なく買っていただけるよう、SNSではエプロンの便利さをお伝えし、実際に使った様子が想像つきやすいよう発信するのを心がけていますね。そうやって、家事が楽しくなっていただけたら嬉しいです。

2017年に自宅の一角に、予約制のショールームを設けました。実際にサイズを確かめたり、オーダーのエプロンの色味を選んでいただく方にご活用いただいています。

──Instagramでも、丁寧に発信を続けていらっしゃいますよね。

勝田さん:コロナ禍で百貨店の催事がすべてなくなってしまい、もう辞めてしまおうかと諦めかけたこともあったんですが、もうちょっと頑張ってみようとSNSでの発信に力を入れ始めました。Instagramは小さなブランドであっても、ハッシュタグをつければ検索に上がってくるので、親和性が高いですね。

最近は、紹介してくださる方も増えてきたので、本当にありがたいです。アンバサダーさんに、実際に使っている様子を投稿していただいたりもしています。ご投稿を見ると、「こういうふうに使っていただけてるのね、素敵」と発見も多く、嬉しいですね。

──お話を伺うと、ご苦労がありながらも楽しんで取り組んでいらっしゃる感じがしました。楽しく続けてこられた秘訣はありますか?

勝田さん:実家が同じような仕事だったこともあり、細々とでもなにかをつくるのは自然なことでした。エプロンは私自身も使うものなので、自分が使いたいものをつくれたら楽しいですし、新しい商品ができると嬉しいですね。周りの方が応援してくださるのも励みになっています。

──お仕事の中で、一番「楽しい」と思う瞬間はどういうときですか?

勝田さん:商品のサンプルやお客さまのオーダーの品が完成したときに、最初に見る瞬間は楽しいですね。

──これから取り組んでみたいことはありますか?

勝田さん:エプロンは母の日の贈り物のイメージが強いのですが、もっとエプロンの便利さをお伝えし、日常使いしてくださる方を増やしていきたいですね。

ずっと一人で続けてきたのですが、最近は、お客さまのお料理教室を別のお客さまにご紹介する、といったことも増えてきました。

お花教室やお料理教室、お菓子づくりの教室など、なにかを手掛けていらっしゃるお客さまは多くいらっしゃいます。そういった方々をおつなぎすることで、お客さま同士の輪が広がっていく機会をつくれたら楽しそうだな、と考えています。

至福のひととき

夕食後に、家族みんなでリビングでそれぞれ好きなことをしながら過ごす時間が、至福のひとときという勝田さん。お仕事でお忙しいご夫婦に、勉強が部活で忙しい二人のお子さんたちにとって、ゆったりと一息つける貴重な時間だそうです。

 《4月26日(水)〜 5月16日(火)》GIVERNY POP UP イベントのお知らせ

「ジヴェルニー」が 銀座三越の母の日イベントに出店します。ぜひご来場ください!

• 会場 : 銀座三越 本館7階 GINZAステージ(東京都中央区銀座4丁目6−16)
• イベント名:「Gifts for MOM」
• 日時:2023年4月26日(水)〜 5月16日(火)